プロバイオティクスとアンチバイオティクス

  • 神林 宏

ヨーグルト

自然の力と科学の力を合わせて賢く健康を維持しよう!プロバイオティクスという言葉を聞いたことがありますか?プロバイオティクスとは、健康に良い影響を与える微生物やそれらを含む食品のことで、特に腸内環境を整えてくれる善玉菌の乳酸菌やビフィズス菌などやこれらを多く含む食品のことです。

これら食品の健康への効果は、整腸機能だけでなく、アレルギーの予防効果やある種の発がんの予防効果など広範囲に渡ることが知られています。プロバイオティクスは、薬よりも安上がりで、自然の力を利用した健康増進剤と言えるわけです。

プロバイオティクスに対してアンチバイオティクスという言葉もあります。アンチバイオティクスとは抗生物質のことです。抗生物質は細菌感染やその予防のために、お医者さまによって処方され投与されます。

たとえば、歯を抜いた後や手術後には、感染予防のために抗生物質の錠剤や点滴が施されたりします。

また、昔は多くの人々がお亡くなりになった細菌性肺炎や結核も抗生物質のおかげで命を落とすことがほとんどなくなりました。

現代科学の力ともいえるアンチバイオティクスもやはり人々の健康に大きく貢献しています。アンチバイオティクスは、その名が示す通り細菌を殺すことで、感染予防や感染症の治療を行います。

しかしながら、同時に腸の中の善玉菌も殺してしまうことがあります。時折、抗生物質を服用すると下痢をしたり(抗生物質起因性下痢症と言ったりします)お腹の具合が悪くなったりする方がいらっしゃいますが、これは抗生物質によって善玉菌が殺されてしまい、腸内環境が乱されたために起きると考えられます。この現象は成人よりも小児に多く見られます。

抗生物質は、今や人類にとってはなくてはならない薬ですが、自分やお子様に抗生物質を投与された際には(抗生物質を使うことは、お医者様が必ず説明して下さいます)、腸内環境が乱れるかもしれないということを頭の片隅に置いていて下さい。抗生物質による治療を行っているときに、プロバイオティクスを同時に摂ることで、下痢の症状が緩和されたという報告もあります(高橋, THE CHEMICAL TIMES, 2014)。

抗生物質を使った治療を行っているときに、ヨーグルトなどを食べることを心掛けることで、腸内環境の乱れを抑えることに役立つというわけです。

抗生物質の科学の力とヨーグルトなどの自然の力をうまく共存させながら、賢く健康増進に努めていただきたいと思います。なお、ご注意いただきたいこととして、抗生物質には多くの種類があり、処方された抗生物質とヨーグルトなどのプロバイオティクス製品との食べ合わせについては、ご担当のお医者さまや薬剤師さまとご相談下さい。